Wednesday, January 11, 2012

Ambiguous Landscape




Posted 19/01/2009 by Haruko Seki / Studio Lasso Ltd www.studiolasso.co.uk

"Extreme Nature: Landscape of Ambiguous Space" from 11th Venezia Arcitecture Biennale

今回11回目を数える建築ビエンナーレでは"Out there: Architecture beyond Building"という、単なる建物の建設を超えてアーキテクチャーを捉え直そうという全体テーマに対し、招待建築家、出展各国がそれぞれにレスポンス したものであった。

私は2日間で2つの会場を鬼のように見て回りへとへとになったが、国によっては最近のメジャーな建築を展示しただけで 終わってしまったところもあり、アッと驚くようなコンセプトやテクノロジーを披露したところもあり、それぞれの国の建築の進化度?のようなものを示してい てとても興味深かった。

その中でも、"Extreme Nature: Landscape of Ambiguous Space"と題する日本パビリオンの出展は、次世代の建築のあり方を示唆する1歩先んじた出展であったように思う。ランドスケープの立場からも、建築と の関係を捉え直すという意味において考えるところが多かった。


日本館の中に足を踏み入れると、そこは白いエンプティな空間で、壁 に近寄ってみるとおぼろげで繊細な鉛筆描きのドローイングがびっしりと書き込まれている。 



  
石上氏のアプローチは、ランドスケープと建築の境界をどこまでも曖昧にするというもので、「建築を計画する ように風景を考えていき、同時に、風景をつくるように建築をつくっていく」という考え方を基盤としている。この考え方は、ここでも紹介されている氏 の"Lake Project"に顕著に見られるものである。

レイク・プロジェクトは具体的には、湖岸や湖底の地形を少しずつ変形させて いくことで、刻々と移り変わっていく湖のかたちをつくることを意図したものであるらしい。つまり、ゆるやかな関係性がゆるやかに景色を変化させてゆき、そ のゆったりとした動きが音もなく移り変わってゆく季節の流れのようななかに静かに溶け込んでゆく空間を目指したものである。





 
建築の外部空間には石上純也氏設計による4つの温室が置かれている。

 

以下は石上純也氏による言葉である。

「それぞれの温室は、すごく華奢な柱と薄いガラスでつ くられていて、計画される環境に応じて空間のプロポーションや柱の数などが異なります。そのプロポーションや周辺に合わせて、熱帯植物を温室の中に、生け 花を生けるように配置していきます。植物の密度は、建築がつくりだす空間と植物がつくりだす空間、そして周囲の風景とが等価になるように、厳密にバランス を調整しながら決められます。また、温室どうしの関係性が既存のランドスケープの中に新しい空間をつくっていきます。空間をつくるとこと風景をつくること を限りなくあいまいにしていくことで、これまでにない建築の可能性を考えようとしています。」

「また、温室とはいっても設備的なものを利 用して大々的に環境を変えていくのではなく、シャボン玉の膜のように薄いガラスに包まれることによって、そこの場所にある環境に少しゆらぎを与えて、 ちょっと環境を変えます。そうすることで、植物の多様性は劇的にひろがっていきます。」

「草花の茎や木の幹のように華奢な柱とシャボン玉 のように薄いガラスによって、既存の公園がつくり出す環境と建築が生み出す空間をどこまでも曖昧にしていけないかと思っています。」


最 後となったが、日本館展示のコミッショナーである五十嵐太郎氏による展示コンセプトを紹介する。「二重化された曖昧な風景」「あらゆるものが同時に存在し ていることを認識する空間の状態」など、これは日本本来の空間特性に根ざした、新しい世紀の建築の「始まり」を示唆する展示ではなかっただろうか。

> 日本館の内部はほぼ空っぽとなり、本来の美しい空間があらわになる。一方、まわりでは温室を点在させることで、外部空間をインテリア・ランドスケープのよ うに構成していく。だが、オブジェとしての建築の反転がヴォイドとしての外部空間を生むのではない。建築のファサードが外部を規定するのでもない。エーテ ルの充満したかのような透明なヴォリュームの温室の内部空間が、外部空間を意識させる。だが、そこには家具が置かれ、室内のようでもある。日本館そのもの も、「建築」というよりは、人工的な地形、あるいは「環境」の要素のひとつとしての見立てを行なう。もともとの屋外空間と、ガラスに包まれた華奢な鉄骨の 構造体のあいだに生まれる空間も重なりあう。二重化された曖昧な風景がたちあらわれる。それは内外の植物、家具、建築、地形、環境など、あらゆるものが同 時に存在していることを認識する空間の状態を生むだろう。 (五十嵐太郎)

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日 本パビリオン(ジャルディーニ地区)
展示テーマ:EXTREME NATURE: Landscape of Ambiguous Spaces
コ ミッショナー:五十嵐太郎(建築批評家、東北大学准教授)
参加作家:石上純也(建築家)、大場秀章(植物学者)


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